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ふらりと気の向くままに平日散歩 <亀戸編> 喫茶店やベーカリー、商店街を歩く

前回の「ふらりと気の向くままに平日散歩」では、亀戸を廻り歴史的散歩を楽しんだ。歴史的見どころも多いが、喫茶店が多く存在するのも亀戸。散歩の途中にふらっと立ち寄って、コーヒーを飲みながら店の雰囲気に浸るのは格別だ。路地を歩いていくだけでも楽しいが、自分好みの喫茶店に出会った時は、またなんともいえない嬉しさがこみ上げてくるものだ。今回は散歩人だけでなく地元の人々の心のよりどころ、喫茶店や商店街の気になるお店をピックアップしてみる。



亀戸香取勝運商店街
江東区で最も古い歴史を持つ亀戸香取勝運商店街。元々は香取神社の境内だったという参道が、明治の頃から商店街として発展してきた。「昭和30年代」をキーワードに、昭和レトロな商店街として訪れる人の目を楽しませてくれる。

商店街に面した場所にある観光協会。
昭和レトロな雰囲気の亀戸香取勝運商店街。鳥居が目印だ。



香取勝運商店街の入り口に店を構える「山長」。大正期より不動産業など幅広い事業をしていた「山長」が、戦後復興のため現在地に和菓子製造販売店を独立させたのがこのお店。「四季を感じて下町の味」をコンセプトに、伝統の味を守り続ける和菓子は常連客も多く、イートインでは甘味を味わうことができる。ザ・ブームのデビュー10周年記念ライブのファンへ配られた記念品の紅白饅頭もこちらで製造。

山長
江東区亀戸3-60-21
http://www2u.biglobe.ne.jp/~yamacho/
※コロナ感染症拡大防止のため、現在店内での飲食は休業中。


「味噌の丸定」は、勝運商店街の会長を務めるご主人と名物女将が営む味噌店。明治初期に創業の乾物屋「丸定」が空襲でなくなってしまい、「味噌の丸定」として再建。創業者は叔父にあたるという。

昭和の雰囲気たっぷりの「味噌の丸定」店内。樽に入れられた味噌は、美味しそうに見える。取材当日は残念ながらお会いできなかったが、いつもは女将が出迎えてくれるとのこと。

味噌の丸定
江東区亀戸3-60-18
http://miso-marusada.com/


青森県下北半島の物産を中心にした「交流ショップ むつ下北」。ご主人の河野さんは亀戸と下北半島を行き来しながら、青森県むつ市(下北半島)と亀戸の振興に力を注いでいる。

交流ショップむつ下北店内。ウニの瓶詰めやいちご煮は地元でも喜ばれる一品。数の子の食感がたまらない「ねぶた漬け」や青森の家庭には欠かせない「スタミナ源たれ」など、地元でしか手に入らない商品が棚に並ぶ。

交流ショップ むつ下北
江東区亀戸3-60-17
月・火曜日定休
https://www.facebook.com/shimokitahantou/


亀戸十三間通り商店街にある「ミュージックショップ 天盛堂」。演歌や歌謡系のCD、カセットテープの品揃えは抜群で、演歌ファンだったら一度は覗いておきたい。店舗でミニコンサートが行われることもある貴重な店だ。

天盛堂  ※2021年1月閉店
江東区亀戸5-15-5
http://www.kame13.com/shop/tenseido.htm


JR亀戸駅東口から徒歩1分の「珈琲道場 侍」は、合気道の指導者でもあるオーナーがオープンした喫茶店。創業は昭和53年と古く、当時は行徳駅前に店を構えていたが、その後ここ亀戸に移転したという。入口ドアを開けると、真正面に鎮座した甲冑がお出迎え。店名からある程度の心構えはできていたはずだが、いきなり視界に飛び込んでくると、やはり驚かされる。もしかすると、ここに来たら武士道を叩き込まれるのでは? と不安になるが、実際は予想とは180度違い、店内はのんびりとした雰囲気。カウンター席にはくつろぎの象徴・ロッキングチェアーが並び(写真上)、店員さんもフレンドリー。そして、予想を裏切ってというと失礼だが、コーヒーの味も確か。なんでも、東京珈琲四天王のひとつに名を連ねているそうで、その評価が間違いないことはコーヒーを飲めばわかるだろう。

ドアを開けると甲冑が(左)。形が一つひとつ異なるコーヒーカップは、お客さんの雰囲気にあったものをチョイスしてコーヒーを注ぐという(右)。
バナナジュースを注文すると一緒に運ばれてくるのがバナナパフェ。「珈琲道場 侍」の人気メニューだ。

珈琲道場 
江東区亀戸6-57-22 サンポービル2F
日曜定休
samurai-cafe.jp/

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第二次世界大戦時、戦災によって大きな被害を受けたという亀戸地区。「この辺りの人たちは何もないゼロの状態から立ち上がってきたから、亀戸に対する愛着が強いんだよ」とは、くらもち珈琲の店主・倉持さん。小学生の時から亀戸に住み、地元の歴史を肌で感じてきた倉持さんは、亀戸のことを知り尽くした亀戸マイスターの認定第1号のメンバー。土地のお年寄りから直接聞いて教えてもらった地域の歴史を、若い人たちに語り継ぎたいと話す。そんな倉持さんが思う亀戸の魅力は「亀戸の一番の魅力は、なんといっても情のあるところ。だから、住み心地が良くて離れられないんだよね」。

店内にはミニギャラリーも。カウンターでは、常連客がコーヒーを味わいながら、楽しげに談話している。
焼き立てのクロックムッシュとスペシャルティコーヒー。写真を撮る前に、ついついひと切れをパクリ。マスタードが効いていて良い感じ。切り口も美味しそうだ。

くらもち珈琲
江東区亀戸3-50-5
水曜定休
https://kuramochicoffee.wixsite.com/coffeelounge

押上から昭和24年に亀戸へと移転してきた「押上せんべい本舗」は、人気の有名店。二代目が始めた山椒せんべいは、ブームの先駆けとなったという。今年は新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ちて大変だったが、新しい商品開発や店舗の見直しをする良い機会になったとのこと。「今は大変な時期だけど、どんどん挑戦すべき。そこにチャンスがあると思うよ、俺は」と現店主。

押上せんべい本舗
取材当日はちょうど誕生祭セール。
バラエティ豊かな煎餅が楽しめるセット(左)、辛さがくせになる山椒焼き(右上)、中高年のお客さんに人気の「平次のなげ煎」(右下)。

押上せんべい本舗
江東区亀戸2-38-5
https://www.oshiage-senbei.jp/


地元の人が集う商店街のよりどころという雰囲気の「たに珈琲店」。取材時は、コーヒー好きのカメラ担当がコーヒーコーディネーターの多仁一裕さんと珈琲談義で盛り上がる。「ああ、これこれ。なぜか珈琲屋さんのモーニングは美味いんだよな」。サラダがついたモーニングにふさわしいサンドウィッチは、珈琲店ならではの美味しさだ。

店内では、先客のご婦人方がくつろぎながら朝のひと時を楽しんでいた。
喫茶店のモーニングといえば、やはりトーストとブレンドのセット。この日は日替わりのハムとタマゴのトーストサンド。
船橋屋をイメージした「亀戸風コーヒーゼリー」。ひと口食べた記者「きなこってコーヒーゼリーに合うんだね」。

たに珈琲店
江東区亀戸5-10-7
不定休
http://www.kameido5.com/store/tanicafe/



亀戸中央通り商店街にあるジュリアンベーカリーは、焼き立てのパンを毎日50種以上揃える人気店。ハワイでベーカリーを経営していたご主人が、奥さまの地元・亀戸に開いたという。洒落た雰囲気で道ゆく人の目を引く外装のベーカリーだ。天然酵母を使用したパンは人気が高く、リーズナブルな値段なのに美味しいとの口コミで客がひっきりなしに出入りする。現在は、感染症対策のため一度に入店できるのは2名まで。

ハード系からソフト系、デニッシュやクロワッサンなど、白神山地の野生酵母を使用したパンが店内に並ぶ。写真下は、つぶあんとバターを挟んだ人気のあんチャバッタ。

移転後のジュリアンベーカリー。こちらもお洒落な店舗。


ジュリアンベーカリー
江東区亀戸5-17-25
※2021年4月に移転(新住所↓)
江東区亀戸2-37-8
水曜定休
http://www.kameido5.com/store/julian/



地元の人だけでなく、バイク好きの人も集まってくるという「ローズカフェ」。マスターとの会話を楽しみに、来店する客も多いとのこと。生まれた年に「ローズカフェ」が開店し、またその店を自分が引き継いだのは何か特別なものを感じると語る、マスターの川名弘友さん。店名の由来は先代がバラを好きだったとのことで、奥さまの誕生花もまた然り。ずっと亀戸の街を見つめてきた川名さんは、「やはり亀戸に誇りを持っているし、自分たちで地元をもっと盛り上げたい。それに、こんなタイミングだからこそ、ホッとひと息つける空間を提供したいですね」と話す。

バイク好きな人が自然と集まってしまうというローズ・カフェ。店の入り口に置いているハーレーが、なんともいえない。
自慢のクラブハウスサンドウィッチ。
江東区役所の養蜂場で採れた蜂蜜を使用した「江東はちみつクリームコーヒー」。
生地から店で仕込む人気のホットケーキ「ホットケーキ・バニラアイス添え」。銅板で焼いたホットケーキは、焼き色がきれいだ。

ローズカフェ
無休
江東区亀戸1-32-7
kameido-rose-cafe.com/


昭和31(1956)年創業、老舗の喫茶店「Sedan(セダン)」。人々に惜しまれながら11月で閉店した「セダン」だが、地元の人々だけでなく遠方からも店を目当てに訪れるほどの人気店。二代目店主の上品なマダムと小悪魔的魅力を持つ美女が店を切り盛りする懐かしい雰囲気の空間は、居心地の良さを感じさせた。取材当時は、内装から女性客が多いのか? と思いきや、男性客も次から次へと入ってくる。「多いけど、大丈夫?」と聞かれるほどパスタはボリュームがあり、嬉しいものであった。

ココア(左)とアイスウィンナコーヒー(右)
つい食べたくなって頼んでしまった、茸の入ったナポリタン。美味い。ボリュームあり。

セダン
※2020年11月30日閉店
江東区亀戸2-8-11



今回紹介した喫茶店は、亀戸の中でもごく一部。亀戸には他にも魅力的な喫茶店が点在するので、のんびりと散歩しながらお気に入りのお店を見つけてほしい。
街には、まだまだ見どころがたくさん。テーマを決めて歩くもよし、ノープランで歩くのもまたよし、休日に比べて人出が少ない時こそできる自分スタイルのリラックス方法が平日散歩。たまには頭を空っぽにして、平日散歩と決め込むのはいかがだろうか。

*ふらりと平日散歩スポット 

※一部の紹介 ※近隣の迷惑にならないようご注意ください。

亀戸駅前公園/江東区内の四神モニュメントのひとつ、玄武(はね亀)。フォトスポットとして紹介されているようだ。

HANEKAME’92
亀戸2-21

江東区「地域別観光スポット 城東・亀戸地区」
city.koto.lg.jp/103010/bunkasports/kanko/spot/97.html

意外な場所で、フォトスポットを発見。こんな思わぬ発見も、散歩ならではの醍醐味だ。


ドラム缶発祥の地
ドラム缶の製造は、日本においては昭和4年に自家用として生産されたのが始まりだが、昭和7年に合資会社日本ドラム罐製作所が設立され、日本最初のドラム缶製造専門工場が建設された。工場は昭和48年に閉鎖されたが、ドラム缶製造工場発祥の地として、工場のあった場所には碑が建てられている。

ドラム缶発祥の地
江東区亀戸1-5-7

おいてけ堀の碑
本所七不思議のうちのひとつ、おいてけ堀。明治42年(1909)陸地測量部作成の「深川図」には、現在の第三亀戸中学校付近の堀に「オイテケ堀」との記載があり、『江東区の歴史』(江東区教育委員会社会教育課発行)によると、「大正三年の地図、中学校のあるところの堀がオイテケ堀と記載。両国駅から亀戸駅にいたるまで、ところどころに置いてけ掘があったようだ。」とのこと。

おいてけ堀の碑
亀戸1-12-1


光明寺
三代目歌川豊国(自称二代目 歌川国貞、本名 角田 [すみだ] 庄蔵のち肖造)の墓がある光明寺。『新編武蔵風土記稿』によると、弘治元年(1555)年の起立、開山は慈宏とのこと。初代歌川国貞は美人画を得意とし、化政・天保期を風靡するほどの勢いを持っていたという。元治元年に国貞没後、師の「一陽斎豊国」を襲名した四代目豊国(明治13年没・初代歌川国貞門人、本名 政吉のち清太郎)も、師とともにここに眠る。梶よう子著『ヨイ豊』は、清太郎をモデルに描いた時代小説。

光明寺
亀戸3-42-1

三代豊国五渡亭園
三代目 歌川豊国が五ノ橋際に住んでいたことで有名な五ノ橋。竪川河川敷公園内には「三代豊国五渡亭園(さんだいとよくに ごとていえん)」がある。季節ごとに展示内容が入れ替わる浮世絵のギャラリーや朱塗りの太鼓橋が目印だ。ギャラリーの浮世絵は、亀戸天神すぐそばの老舗蕎麦店「旬香庵 前野屋」店主・永井氏所蔵のコレクション。

浮世絵ギャラリー

三代豊国五渡亭園
亀戸6

五ノ橋豊国通り商工会
http://www.gonohashi.jp/gototeien-1.htm

江東おでかけ情報局
koto-kanko.jp/
ことみせ
kotomise.jp/
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