代官山の街角に突如現れた、色鮮やかな花々に囲まれた一軒のショップ。一見、どこにでもあるお洒落な花屋だが、ここには値札もなければレジもない。売っているのは花ではなく、自分自身の感性で「色」を選び取る、贅沢な時間。
富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が、2026年3月20日(祝・金)から23日(月)までの4日間、TENOHA代官山で開催するポップアップイベント「花を売らない、色を撮る花屋」は、同社デジタルカメラの代名詞ともいえる機能「フィルムシミュレーション」による豊かな色再現をスペックではなく五感で体験できる特別な場所だ。
デジタル化が進み、写真は「撮った後に加工するもの」へと変わった。そんな今だからこそ、同社が提案するのは「撮る前に色を選ぶ」という、カメラ本来のプリミティブな愉しみ。開催前日、編集部がひと足先に体験した、その濃密な記録を届けよう。
スペックの先にある「記憶の色」を求めて。90年続く富士フイルムの執念
「富士フイルムは写真フィルムの時代から一貫して画質、特に『色』にこだわってきました」。先行体験会の冒頭、登壇した同社コンシューマー事業本部 事業推進本部 カメラ事業部 副事業部長の田口氏は、静かな、しかし確かな自信をのぞかせた。
同社が約90年にわたり追求してきたのは、単なる忠実な再現ではない。人が心に描く「記憶に残る色」、そして「感動を再現する色」。その哲学は、小型軽量を極めた「Xシリーズ」や、圧倒的な情報量を誇る「GFXシリーズ」へと脈々と受け継がれている。
今回のイベントの核となるのが、フィルムを交換するように色調を選べる独自の機能「フィルムシミュレーション」だ。用意されたモードは、実に20種類。
Velvia(ベルビア): 高彩度でメリハリのある、風景写真の王道。
Classic Chrome(クラシッククローム): 彩度を抑え、渋みのある階調で物語を紡ぐドキュメンタリータッチ。
REALA ACE(リアラエース): 目で見ている世界に最も近い、忠実で立体的な描写。
Classic Neg.(クラシックネガ): かつての家庭用カラーフィルムのような、情緒的で深い色合い。
など全20種類。
これらをダイヤル一つで切り替える。スペック表の数字を追うことでは決して得られない、「色と対話する」という体験。それがこの花屋に込められた願いである。
五感で辿る、自分だけの一輪と一色の物語
イベントは、自身の心と向き合う5つのステップで構成されている。
①思いを綴る:言葉から始まる色探し
最初に出会うのは、真っ白なメッセージカード。大切な誰かへ、あるいは自分自身へ。今の気持ちをペンで綴ることから、自分だけの色を探す旅がスタートする。
②お花を選ぶ:直感と気分が交差する瞬間
人気フラワーショップ「ALL GOOD FLOWERS」の協力により、会場には個性豊かな花々が並ぶ。6種類、色違いを含めたラインナップから、先ほど書いた「言葉」に寄り添う一輪を直感で選ぶ。
③撮影する:ダイヤルを回すたび、世界が塗り替わる
選んだ花をフラワーベースに生け、いよいよ撮影へ。最新の「X-T50」や「X-M5」を手に取り、ファインダーを覗く。
ここでの醍醐味は、左肩のダイヤルを回すたびにモニター内の色がドラマチックに変化すること。
「Velvia」で撮れば花の生命力が爆発し、「Classic Chrome」に切り替えれば一転して映画のワンシーンのような静寂が宿る。さらに、青色の深みを強調する「カラークローム・エフェクト・ブルー」などの調整も可能。スマホのフィルター加工とは一線を画す、メカニカルな操作感とダイレクトな色変化。撮るたびに「そう、この色だ」と納得する瞬間の快感。
④持ち帰る:空気感を「形」にする喜び
撮影したデータは専用アプリでスマホへ転送できるだけでなく、その場でプリント。同社の写真パネル「Shacolla(シャコラ)」に貼り、選んだ花とメッセージカードと共にオリジナルパッケージで受け取れる。撮影した時の空気感や感情を、物理的な「形」として持ち帰る。それはデジタル時代における、最も贅沢なギフト。
⑤色を知る:受け継がれるフィルムのDNA
最後は、富士フイルムの歩みを知る展示エリアへ。
1990年代の貴重なネガ・ポジフィルムや、当時のカメラの内部構造が公開されている。
人気モード「クラシックネガ」のルーツが、かつてのカラーフィルム「スペリア」にあること。
そして「写ルンです」の記憶が、最新のデジタル技術の中に息づいていること。
「エモい」と評される色の正体が、90年の歴史の積み重ねであることに気づかされる。
シャッターを切る前の数秒、自分の感性を信じる豊かさ
「加工」という言葉で後からいくらでも修正が効く現代。しかし、この「色を撮る花屋」で体験したのは、目の前の被写体に対して「自分はどう感じ、どの色で残したいか」をあらかじめ決めるという、真剣な感性の発露だった。
ダイヤルをカチカチと回す音、シャッターの重み。そして、選び取った「色」が定着したプリントの質感。TENOHA代官山で過ごす4日間は、あなたが普段スマホで撮り溜めている膨大な写真の、その一枚一枚の意味を問い直す機会になるだろう。
花を買う代わりに、自分の感性を再発見する。そんな新しい花屋の扉を、ぜひ叩いてみてほしい。
| ポップアップイベント「花を売らない、色を撮る花屋」概要 |
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| 会場/TENOHA代官山 日程/2026年3月20日(祝・金)~23日(月) 11:00~18:00 ※最終日は17:00終了 入場料/無料 主催/富士フイルムイメージングシステムズ株式会社 |
