柿本人麻呂が石見国で暮らしていたとされ、ゆかりのあるスポットが点在する現在の島根県西部地域。石見地方の伝統芸能・石見神楽は各地で公演が催されており、石見神楽を支える地域独特の産業も発展してきた。
石見神楽の発展を語る時に忘れてはならないのが、老舗衣装店「細川神楽衣裳店」。初代店主の故・細川勝三さんは、石見神楽を後世に残すため石見神楽校訂台本を作成したり、煙火を考案するなど様々な革命を起こした。不慮の事故で急逝された後は、故・細川史子夫人が現在の豪華絢爛な衣裳を石見神楽にはなくてはならない産業として支え、現在は娘である栩木千秋子さんがその看板を守っている。
衣裳が出来上がるのは、衣裳制作に関わる人数や衣裳の作りにもよるが、約2〜3カ月ほど。説明をしてくれたのは、金糸の刺繍を施していた職人の小林 龍希さん。年々職人が少なくなっていく状況に、「(石見の伝統を地域に定着させた)この店を残さなくてはいけない」と職人になることを志願したそうだ。
細川神楽衣裳店 島根県浜田市大辻町75-2 |
伝統的工芸品に指定されている石州和紙。石見神楽面の製作や文化財の修理にも使われるほか、内装やインテリアなどに建築の素材として和紙が見直されている。また海外のデザイナーとのコラボレーションなども行われており、国内外問わず需要が増えてきているという。明治時代には6,000軒以上あった事業所も、現在ではわずか4軒に。石州和紙会館は展示室で商品を展示しているほか、工房内で石州和紙製造の全工程の作業ができ、紙漉き体験も行っている(要予約)。
※動画では、原料の皮剥の作業の様子を収録。
柿本人麻呂の妻・依羅娘子(よさみのおとめ)の生誕の地ともいわれる島根県江津市。ここで聖徳太子の時代(650年ごろ)に法道仙人が見つけた有福温泉は「美人の湯」と親しまれている。今夜の宿は旧「旅館 樋口」をリニューアルして一昨年オープンした「アウルリゾート有福温泉」。隣接する「神楽殿」では石見神楽の公演を観覧できるということで、客室棟に隣接する「アウルダイニング」にて食事してから向かうことに。
夜は提灯が灯され、ノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
目の前で繰り出される舞は、大迫力。感染症対策のためビニールカーテン越しではあったが、充分すぎるほど楽しめた。「石見神楽を舞うということは皆の憧れで、神楽を演じている人はヒーロー」なのだと、地元の方々は口々に話す。それほど、神楽は地域に受け継がれている習俗としてだけでなく人々の中に染み込んでいるもの、アイデンティティーとして誇れるものだということがわかる。
翌朝。朝の散策は気落ちが良い。鳥のさえずりを聞きながら、“山の朝”ののどかな雰囲気が気分をリフレッシュさせてくれる。
客室には半露天風呂が付いているので、朝風呂を楽しむ(下のスライドショー参照)。鳥のさえずりを聞きながら、湯船につかる。湯船の前に椅子があるので、すぐに着替えられるのは嬉しい。
アウルリゾート有福温泉 島根県江津市有福温泉町695 https://owlresort.jp/ |
地元の人だけでなく近隣からも休日には訪れるという3軒の温泉を中心に、旅館やホテルが集まる有福温泉。休日になると、近隣からここの温泉目当てに通ってくる人も多いらしい。昔ながらの温泉街の風景を楽しみながら、のんびりと散策する。
御前湯
皐月(さつき)湯
やよい湯
近隣のみどころ
有福大仏
善太郎餅本店
有福の地に伝わる『妙好人 善太郎』の逸話を今に伝える銘菓。
島根県の観光情報は しまね観光ナビ https://www.kankou-shimane.com/ |
関連記事