島根県西部を訪ねて<3> 世界経済にも影響を与えた鉱山遺跡〜石見銀山

前回まで、日本神話や古事記を題材にした伝統芸能・石見神楽を体験し、その奥深さと迫力ある舞台に魅了された。今回はその興奮も冷めやらぬうちに、さらなる歴史を感じさせるアジア初の鉱山遺跡へ。

石見で有名な観光スポットとして挙げられるのは、やはり世界遺産にも認定されている石見銀山。銀山の最盛期には、世界の産銀量の約3分の1を占めていた日本銀のかなりの部分をここで産出していたと考えられている。

ひと言で銀山といっても、遺跡だけでなく産業とともに栄えていた集落というか町がそのまま残っているので、すべてをまわって見ようとしたら半日では難しい。もちろん徒歩もいいが、効率的にまわるなら電動自転車がおすすめ。斜面のため路面が濡れている時は危ないので、天候に合わせて計画を立ててほしい。

石見銀山は、大きく分けて江戸時代の代官所や武家屋敷などが並ぶ「大森エリア」と銀の採掘と生産の中心地であった「銀山エリア」、石見銀山の港町・温泉町として栄えた「温泉津エリア」と3つのエリアに分かれている。最終回の今回は、自然豊かな中に当時の町並みが残されており、趣深い風景が広がる「大森エリア」「銀山エリア」を紹介。

龍源寺間歩
島根県大田市大森町ニ183
石見銀山には大小合わせて600以上の間歩(まぶ・銀鉱石を採掘するための坑道)があるという。石見銀山遺跡の中で唯一、常時公開されている坑道(有料)が龍源寺間歩。江戸時代中頃に開発され、当時の石見銀山の姿を体感できる。

石室山 無量寿院 羅漢寺 五百羅漢
島根県大田市大森町イ804
https://www.rakanji.jp/
羅漢寺には、亡くなった人々の霊と先祖の霊を供養し安穏と至福を祈願するための五百羅漢像が安置されている。羅漢像は地元の石工、坪内平七(つぼうちへいしち)一門の手によるもので、県指定文化財となっている。石窟の前を流れる銀山川の支流に架けられた三基の橋は、当時のままのもの。

 

観世音寺
島根県大田市大森町
小高い丘の上にある観世音寺。現在の本堂は1800年代後半に建てられたもの。石段を昇ると、街全体が見渡せる。

栄泉寺
島根県大田市大森町
曹洞宗の禅寺である栄泉寺には、石見銀山の民を大飢饉から救った代官の逸話が残る。朱塗りの山門は水天門または竜宮門と呼ばれる、この地方では珍しい形式の山門なのだそう。

豊栄神社
島根県大田市大森町
戦国大名・毛利元就を祀る神社。幕末時に大森に駐屯した長州の隊士名が灯篭や鳥居に刻まれており、激動の幕末を知る遺跡。

 

旧河島家(武家屋敷)
島根県大田市大森町ハ118-1
唯一公開されている武家屋敷・旧河島家は、1800年代初めの地役人住宅を復元したもの。上級武士の構えと銀山経営や銀山領内の支配にあたる銀山附役人の屋敷の特徴をよく顕している。

熊谷家住宅
島根県大田市大森町ハ6
http://kumagai.city.oda.lg.jp
石見銀山御料で最も有力な商家であった熊谷家の主屋と5つの蔵と納屋からなる熊谷家住宅は、享和元年(1801)に建築された民家建築で、江戸時代後期から末期にかけての御料の有力商人の身分や生活の変遷を知ることができる。明治時代には郵便局を開設、郵便の業務も行われていたという。

石見銀山大森郵便局
島根県大田市大森町ハ91-3
街並みに合わせた外観が可愛らしい感じで、入り口の前には昔のポストも。人気フォトスポットのひとつ。

 

町並み交流センター(旧裁判所)
大田市大森町イ490
立憲制度が発足した1890年に設置された大森区裁判所。西洋建築の影響を受けた旧裁判所は部分的に展示施設に改装され、現在は保存の取り組みを紹介するための施設として公開されている。

清水谷製錬所跡
1895(明治28)年に清水谷に開設された製錬所。わずか1年半で閉鎖。

木枠で囲まれた自動販売機が置かれた「たまる屋」。

銀山口自治会館前

ぎんざんカートの走行の様子

石見銀山世界遺産センター
島根県大田市大森町イ1597-3
https://ginzan.city.oda.lg.jp/

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