島根県西部を訪ねて<1> 石見地方の伝統に触れ、海の幸を堪能する

写真上/海沿いを走るJR山陰本線(イメージ)

12月初旬、冬が始まりつつある島根県の西部・石見地方を訪れた。今回の取材では、石見地方に根付いた伝統芸能である石見神楽を鑑賞するだけでなく、石見神楽の命である衣装や神楽面の創作現場にふれる機会にも恵まれ、有意義な時間を過ごせた旅であった。

出雲えんむすび空港よりバスで移動、JR西日本山陰線出雲市駅から電車に乗り、大田・江津方面へ。地元の人たちの中に紛れて席に座っていると、車窓からは時折海が見える。後日確認してみると、電車は小田駅を過ぎたあたりから海沿いを走っていたようだ。

JR出雲市駅。独特なデザインの駅舎。
出雲市駅前の神話オブジェ「スサノオのオロチ退治」


ものすごく欲しかったのだが、残念ながら叶わず……浜田鉄道部作成「驛鐵印」↓↓

 
かつては神職が舞っていたという石見神楽。明治に入り神職舞から民間の氏子舞へと神俗交替し、石見の各地に神楽団体が結成された。島根県浜田市の「柿田勝郎面工房」では、柿田勝郎さん、兼志さん親子が、石見神楽の歴史と石見神楽面について語ってくれた。

粘土の原型に石州和紙を貼って製作する石見神楽面。石州和紙で作ることのよいところは、軽く丈夫なこと、細かい所まで作り込むことができること。「脱活乾漆」の技法を応用した柿渋入りの糊で和紙を幾重にも貼り、面を剥がすために原型をたたいて壊す面は、長浜人形に携わる人形師によって作られた。

この軽くて丈夫な和紙の面は、神楽舞の動きをより躍動的なものに、また表情の早変わりなど表現に幅をもたせてくれる。柿田さんによると、現在では近隣だけでなく様々な所から注文が来るという。

 ※動画では柿田勝郎さんと兼志さんが説明しています。

柿田勝郎面工房
https://kakita.ai-fit.com/


浜田市で江戸時代より伝わる「長浜人形」の伝統工芸士・福美(ふくみ)さんの工房「島根の招き猫工房」。日本古来の伝統工芸の技法と昔ながらの素材にこだわりつつ、現代のデザインで土人形を製作する福美さん。膠で泥絵の具をといて着色した人形は、柔らかくて温かみのある質感に仕上がるという。

干支の兎やひな人形などのほか、人気の高いのが招き猫。フルーツを被った猫や、多幸にかけて蛸を頭にのせた猫など可愛らしいものがたくさん並ぶ。

※動画では福美さんが長浜人形の製作について説明しています。

島根の招き猫工房
https://xn--w8j053m8hk.jp/

 

次ページ➡︎ 海の幸を堪能