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〈コラム〉
肉の名店がこだわり抜いた逸品 舌の上でとろけるハンバーグ

お取り寄せ、デリバリー、テイクアウト……。
家で食べるのが基本のコロナ禍での食事だが、自炊だけで済まそうとしても当然ながら限界が。そんな時に心強いのが、お店の味が自宅で楽しめるこれらのサービスだ。
どれも家で食べるためのサービスなので、全部同じようなものと思っている人がいるかもしれないが、厳密にいうと全く異なる。

テイクアウトは買ったものを自分で持って帰る。

デリバリーは近所の店にネットや電話で注文したものを配達してもらう。

お取り寄せは注文した商品を配送してもらうことを指す。

そして届け先までの距離の制限がないお取り寄せは、本当に美味しいもの、本当に食べたいものを妥協することなく注文できる、最強のツールなのだ。

とは言いつつ、ちょっと出かければすぐに欲しいものが入手できる環境にあったために、私はこれまでの50年を超える人生で、恥ずかしながら一度も食品のお取り寄せをしたことがなかった。
仕事柄、取材で全国をまわって現地の旨いものを食べることが多く、「本当に旨いものが食べたいなら、現地で食べなきゃダメ」とも思い込んでいた。
そう、ある時まで。

あれは、『男の隠れ家』2020年8月号(6月27日売り)の第一特集「お取り寄せ」の『ビールに合う酒肴』で紹介したい旨を、日光にあるレストランに伝えたGW頃のことであった。
こちらの希望はお取り寄せの「揚ビーフメンチカツ」の掲載許可。
すると、すぐに「当店一番のオススメ商品はハンバーグだから、そちらに変更できませんか?」という問い合わせがきた。

しかし、今回のテーマはあくまでも“ビールに合う酒肴”なので、もう一度検討してほしいとお願いしたのだが、後日、掲載お断りの電話をいただく。
よくよく話を聞いてみると、前述したように「当店のオススメはやはりハンバーグ。それも普通のハンバーグではなく極上のタータルハンバーグなので、家呑みでビールのつまみにするような気軽なメニューではない」というのが理由だったのだ。

普段であればそこで話は終わってしまうのだが、「自信があるから今回の掲載はお断り」というのは自分の編集者人生で初めての出来事だったので、大変気になりとりあえず取り寄せて食べてみることにした。

ちなみにタータルハンバーグとは、ひき肉ではなく、細かく刻んだ肉で作られたハンバーグのこと。似たような名前の料理に、みじん切りにした生肉と薬味や卵黄を自分で混ぜて生のまま食べるタルタルステーキがあるが、これとは全くの別物だ。タータルハンバーグでは、内側はほぼ生肉状態だが、表面はしっかり焼かれる。

さて、冷凍便で無事に到着した件のタータルハンバーグ。
冷蔵庫に移して一日かけて解凍し、さらに室温で2時間ほど置いたところで真空パックから取り出す。ざっと見たところ、ハンバーグにあるはずのつなぎが見当たらない。どうやら細切れの牛肉だけでハンバーグの形に成形しているようだ。

使われている牛肉は前沢牛、松阪牛、仙台牛などの黒毛和牛。フライパンを熱している間、手のひらの上にハンバーグを乗せていると脂がじんわりと溶け出した。
普通、牛肉の脂の融点は40〜50℃だが、黒毛和牛の脂の融点はだいたい25℃、松坂牛は17℃前後といわれている。融点の低さは不飽和脂肪酸の含有率で決まり、含有率が高ければ高いほど融点は下がり、肉質は上質になる。
「人肌で溶ける」とはよく聞くが、上質な黒毛和牛は「室温で溶ける」のだ。

フライパンが温まったら、強火の状態で油をひかずにハンバーグを置く。前述したように、すでに室温で脂の融解は始まっているので油をひく必要はない。
強火でジュ〜っと焼き目をつけ、すぐに裏返して同じように焼き目がついたら出来上がり。間違ってもフライパンに蓋をして蒸したりしてはいけない。
もし中まで火が通ってしまったら、その瞬間つなぎのないタータルハンバーグは上等な肉で作ったそぼろの塊になってしまう。
「ジュ〜ッ、パタン、ジュ〜ッ」のリズムで焼き目をつけ、裏返して焼き目をつけ、お皿へ移すのが鉄則だ。

黒毛和牛 タータルハンバーグ


黒毛和牛 タータルハンバーグ

いよいよ実食。中に火が入ってしまっていないかをチェックするため、まずは半分に割ってみる。大丈夫、中はしっかり生だ。
もともと焼肉を食べに行っても表面を炙る程度、ステーキなら「ブラックアンドブルー(※ニューヨーク流のステーキ肉の焼き方)で」と注文して通じない店は信用しないくらい、生に近い肉が好きな私。ワクワクしながらタータルハンバーグを口に運ぶ。
あらかじめ時間をかけて解凍して室温に戻しているので、変に冷たい部分が中に残ることもなく、いい感じで生のままだ。
いや、生云々というより、何だこれ?! 一番わかりやすく表現するなら、舌の上でとろけているといったところか。

黒毛和牛 タータルハンバーグ


まさか、ハンバーグのレビューで「舌の上でとろける」という文言を使うことがあるとは思わなかった。これぞ融点が低い黒毛和牛の本領発揮。
間違っても、近所のスーパーで買ってきた安い肉を使って同じものを自分で作ろうなんて考えてはいけない。絶対に腹壊すから。

あらかじめ味付けされているので、本当にただ表面を焼くだけで、お店で提供される味と食感が体感できるタータルハンバーグ。
確かに「家呑みのビールのつまみ」ではない。本当に申し訳ないことをした、と反省しきりである。

タータルハンバーグ
1枚700円(5枚から配送)
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日光グルマンズ和牛
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