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G7サミット開催地に決定! 今注目の瀬戸内・広島を巡るグルメ&アクティビティの旅

少し第8波の予兆が聞こえてきたコロナ禍の今日この頃だが、海外からの渡航客受け入れなど、この3年間の中では最も落ち着いた感があるのがまさに今。ところで外国人観光客といえば東京・浅草や京都などに人気が集まるイメージが強いが、世界でもっとも人々の記憶にある日本の都市は広島かもしれない。それはもちろん、世界初の原子爆弾が投下された街という悲しい歴史の記憶として。だが、戦後いち早く復興を果たし、中国地方最大の街として再生したのもまた事実。決して後ろ向きにならず後世に伝え残そうとする、その強さには頭が下がる思いだ。

そんな中、また再び広島が世界の注目を浴びることに。来年(2023年)の「G7サミット」の開催地に決まったのだ。G7サミットの開催地といえば2016年の伊勢志摩といい、サミット当日は警備が厳重で訪れるのは無理だが、その前後には国内外の観光客が押し寄せることは必至。そこで今回は、そんな広島の魅力をいち早く探るべく現地へ向かい、平和都市・広島ならではのアクティビティや地元グルメを体験してきた。

いま広島で一番注目のお肉「比婆牛」を食す

1,000年以上も前の古くから、日本三大牛市場のひとつとして栄えた広島県。その歴史は脈々と続き、現在は4種の和牛《広島牛(ひろしまぎゅう)、元就(もとなり)、比婆牛(ひばぎゅう)、神石牛(じんせきぎゅう)》が県内でブランド化されている。そして、その中でもいま一番注目されているのが「比婆牛」だ。

広島県比婆郡(現・庄原市)で1843年(天保14年)に畜産家・岩倉六右衛門によって作出された、全国の和牛4大ルーツのひとつである岩倉蔓(いわくらづる)。これを発祥として比婆庄原地域で代々にわたって改良が続けられ、その集大成となったのが比婆牛だ。

頭数が少なく、ほとんどが地元で消費されてしまうことから“幻の和牛”と言われる比婆牛は、甘みと溶けるような口当たりに直結するオレイン酸を豊富に含み、融点が低いことから冷製料理に向いているという。そして今回、その比婆牛の魅力を余すことなく調理できる広島市の日本料理店「肉割烹 まさ㐂」で比婆牛を試食する機会を得ることができた。それでは、さっそく実食といこう。

和食に肉を取り入れた「肉割烹 まさ㐂」。

カウンターの端には正真正銘、比婆牛を扱っているという証の認証書が。

おまかせコース(夜)は前日までの予約制で、料金は10,000円(税別)。※時期によってメニューが変更する場合あり。

比婆牛マルシンの菊花和え

マルシン(モモの中心にある希少部位で非常に柔らかい)を軽く炭で炙り、スダチの搾り汁と塩を振って菊花といっしょに和えた一品。味付けはあまり手を加えずにシンプルで、上に乗せたイクラといっしょに口へ運ぶのがおすすめの食べ方。散らしたシソの小花が醸し出す、ふんわりとしたシソの香りが食欲をそそる。

比婆牛ヒレ飯蒸し 丹波餡掛け

器の中に広がる餅米と比婆牛のヒレを55度の低温でじっくりと3時間蒸し、季節の栗を使った餡をかけた一品。上に添えた山葵といっしょに食べる。

比婆牛サーロインと煮穴子の広島菜巻き

煮穴子を作った出汁で軽く火を入れたサーロインで穴子を巻き、さらにその上から広島菜の漬物で巻いた一品。穴子と広島菜は、広島での日本料理の定番ともいえる存在で、広島血統を有する比婆牛にぴったりの食材。

肉寿司盛り合わせ(ランプ、マルシン、ヒレ、比婆牛の棒寿司)

カツオ出汁で軽く火を入れたヒレ肉とウニ(左)、表面をサッと炙ったマルシンとキャビア(中)、塩とお酒を揉み込んで55℃で4時間蒸したランプとトリュフ(右)。同じ牛でも部位によって異なる食感やテイストが楽しめる、盛り合わせでありつつ食べ比べ的な一皿。奥は握りと同じくサッと炙ったマルシンの棒寿司。こちらのシャリには大葉と柚子とごまを入れ、ちょっと薬味を効かせた味わいが楽しめる。

「比婆牛は融点が低く、脂の口溶けがよいので冷製の料理に向いている」と語る、店主の平賀正樹さん。

肉割烹 まさ㐂
住広島県広島市南区段原1-6-9
TEL. 082-569-5553
nikukappoumasaki.com/

肉割烹 まさ㐂の詳細情報を見る



広島の街に残る被曝遺産を地元ガイドと自転車で巡るピースツアー

小回りの利く自転車で広島市内の被曝遺産を回る。観光バスでは行けないような細かいポイントへも行きやすいのが魅力だ。

前述したように、広島は初めて原子爆弾が投下されたことで世界中にその存在が知られる街。あれから77年の月日が流れ、見事に復興を果たしたとはいえ、街のいたるところには今もその爪痕が残されている。そんな被曝遺産を地元ガイドとともに自転車で訪れる「広島の街に残る被曝遺産を地元ガイドと自転車で巡るピースツアー」が今、人気を呼んでいる。

広島に落とされた一発の原子爆弾は、半径2.5kmの圏内を一瞬で焦土に……。ひろしまサイクリングsokoiko!が運営するこのツアーは、そんな広島市内に点在する、当時のままの姿を残している遺産を電動自転車で移動しながら、地元ガイドが細かく説明してくれるというもの。原爆ドームや広島平和記念資料館だけではわからない被爆地の本当の姿に、原爆の恐ろしさ、戦争によって犠牲となってしまった人々の惨状をあらためて感じさせられ、二度とこのような悲劇を起こしてはならないと誰もが思うことだろう。

ピースツアー参加のため、原爆ドームを望む平和公園へ。

まずは原爆投下前の写真や地図を絡めたガイドさんの説明がスタート。

ツアー参加者に熱く語りかける代表の石飛さん。

原爆の爆風で曲がった窓のサッシ。80年近い時が経過したというのに、そのままの形で残っていることに驚きを感じる。

広島市内を走る路面電車の基地。ガイドの石飛さんの説明によると、原爆投下後に路面電車が運行を再開したのはわずか三日後だったという。広島では原爆投下時に走っていた電車が二台残っているが、そのひとつが手前の「652」。そしてもうひとつが、奥4台の左から2台目の車両「651」。これらの車両が今も現役で走っていることに驚きを隠せない。

こちらがもうひとつの車両「651」。見た目は最近の路面電車と見分けがつかない。

外観や車内は長い年月の中で手を加えられているが、ベースとなる車輪や駆動部は当時のままだそう。

今回のツアーでガイドしてくれたsokoiko!の面々。(左から)HITひろしま観光大使の浜野哲夫さん、株式会社mint 代表取締役の石飛聡司さん、株式会社mint Sokoiko! 広島マネージャーの福原信太郎さん。

Sokoiko!
sokoiko-mint.com/jp/



広島の地魚と瀬戸内ワインのマリアージュ

今回いただいたのは、basic+mainコース(メイン料理:魚)6,000円、季節ごとにかわるグラスワイン3杯セット 2,000円。

広島のグルメ&アクティビティ旅の締めくくりは、場所を三原市に移して地魚とワインのマリアージュを楽しむことに。舞台となるのは、以前コラムでも取り上げたことのある瀬戸内醸造所。こちらの醸造所ではレストランが併設され、いつも賑わっている人気店なのだそう。瀬戸内醸造所レストランmioのコンセプトは「ワインに合うSETOUCHI料理」。目の前に瀬戸内海が広がる同店では、港に揚がった地魚を使った料理がワインとともに味わえるのだ。魚は獲れたて、ワインは醸造所だからもちろんおいしいときたら、期待するなというほうが無理というもの。ではでは、いただきましょう。

どちらかというと山の中のイメージが強いワインの醸造所だが、瀬戸内醸造所はその名のとおり海のそばにあった。

瀬戸内醸造所の敷地から望む瀬戸内海。豊富な漁場でもある、この穏やかな海から獲れた魚はおいしいに決まってる。

建物の中に足を踏み入れると、ワインの直売コーナーが。「あぁ、やっぱりここはワインの醸造所なんだな」とあらためて確信する。

直売コーナーの奥にあるのが、今回の舞台となる「瀬戸内醸造所レストランmio」。

料理が到着するまでのしばしの間、スパークリングワイン「2021 Touha サンセミヨン」をいただく。美味。

最初に運ばれてきたのは、その時に採れる食材を使った季節の前菜盛り合わせ「八寸」。尾道の青パパイヤを生のきくらげとともに瀬戸内醸造所の白ワインでコンポートした料理(上左から2番目)や三原の唐辛子専門農園で作られたビキーニョという珍しい唐辛子のピクルス(下左から2番目)など、8品が並ぶ。

瀬戸内小魚のオーブン焼き
小魚が豊富に獲れる瀬戸内ならではの料理。レストランでは通年メニューだが、時期によって手に入る魚の種類は変わるので、これを注文すれば季節感が感じられるという。この日はオーブンで焼き上げた小さなシログチとガラエビに、三原の農家さんのオリジナル品種でパプリカのような「瀬戸内南蛮」という唐辛子を加えてロースト。

広島産烏賊のソテー
ソテーした後からレモン汁で少し酸味を加えたハリイカに、イカゲソとアサリ出汁、イカスミを使った濃厚なソースを添えた一品。

芸南漁協 真鯛のバプール
本日のメインは、漁協から仕入れた新鮮な真鯛。しっかりと蒸しあげた真鯛に女鹿平の舞茸のソテーを添え、カボチャと甘味噌を使ったソースでいただく。一番上には、乾燥させてからパリッと揚げた真鯛の皮が。

締めの自家製手打ち麺 伊吹いりこ出汁を使った、醤油ベースのスープ
コースの締めは手打ち麺。この日は伊吹いりこ出汁を使った醤油ベースのスープに、しらさぎ小麦という岡山産の小麦を使った手打ち麺が入ったラーメン。

万汐農園の無花果のワインコンポート
尾道・向島の万汐農園で採れたイチジクを瀬戸内醸造所のワインといっしょにコンポートしたデザート。

瀬戸内醸造所レストランmioでいただいた料理は、そのコンセプトどおりワインとのマリアージュを考えて作られたものばかり。それぞれの料理にはソムリエが選んだ瀬戸内ワインの中からベストなものが提供され、それがさらに料理をおいしくしてくれる。ワインも食材も瀬戸内産だから、親和性が高いのだろうか。とにかく、旅の終わりによいものを食べさせていただきました。感謝。

瀬戸内醸造所レストランmio
広島県三原市須波西1-5-26
Tel. 050-3749-9902
setouchijozojo.jp/locations/restaurant/

 

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