発売開始から3カ月 日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」の反響は?

鏡に映る自分の姿を見るたびに目につくポッコリお腹。なんとかしなきゃと腹筋運動やジョギング、ウォーキングなどを始めてみても全然改善されないし、記者のようなアラ還だと変に激しい運動をしたら逆にカラダによくないし。一体どうすればいいのやら……。そんな悩みを抱える人の前に今年4月、颯爽と登場したのが日本初の内臓脂肪減少薬「アライ」だ。

有効成分オルリスタット60mgを含有するアライは、1回1カプセルを1日3回、食事中または食後1時間以内に服用することで、食事で摂取した脂肪の約25%を便と一緒に排出し、腹部が太めな人の内臓脂肪および腹囲の減少という効能・効果を持つカプセル剤。長期投与試験では、52週の服用で内臓脂肪面積がマイナス21.52%、腹囲はマイナス4.89%という結果を確認したという。

しかし、このアライ、手に入れるまでが少々面倒くさい。というのも要指導医薬品のため、購入時に薬剤師からの対面での説明が必要で、さらに初回購入3カ月前から生活習慣改善の取り組みを行い、1カ月前から使用中にかけては取り組んでいる内容と体重・腹囲を記録しなければならないのだ。かくいう記者も発売日に近所の薬局で購入を試みたが、薬剤師さんから「購入するなら3カ月前から準備しなければなりません」と丁重にお断りされてしまった。もちろん、これは法律で決められていることなので別に薬剤師さんを恨んでいるわけではないが、痩せるためにはこんなハードルもあるんだな、と残念に感じたことを思い出す。まぁ本当に痩せたいのなら、普段から生活習慣改善に取り組んでいるだろうし、こんな条件はハードルでもなんでもないのかもしれないが……。

では、いざ購入するまでにどのような記録を残せばいいのか? 実は、そんな疑問に応えるアプリが存在する。アライを販売する大正製薬がリリースしたアライ専用LINEアプリ「STEP UP DIARY」は、簡単に生活習慣や服薬の記録がつけられ、さらには自動対話による問い合わせ機能も搭載しているので疑問や不安点があっても即時解消できるのだ。

アライ購入者の反響は?

現在、アライを販売している薬局は全国で約11,000店舗。そして適正販売するために必要な研修の受講を完了した薬剤師は約40,000人を超えている。この数を聞いて、ちょっと驚いた。販売開始から、まだわずか3カ月しか経っていないのに、こんなにも販売店側の体制が整っているとは思っていなかったからだ。やはり薬局にとっても、アライは注目に値する新薬だということなのか。またメーカーである大正製薬の発表によると、すでに販売開始3カ月で販売数は年間計画の7割を超え、想定以上の非常に大きな反響があるという。

2024年7月現在、アライのパッケージは90カプセルと18カプセルの2種類が販売されているが、購入者の実に87.1%が90カプセルを購入。さらに購入者の89%が過去1年間に「医薬品 漢方 むくみ・肥満」および「機能性食品脂肪・糖」といった関連商品を購入しておらず、また90カプセル入りの購入者のうち、46%は継続して2回目を購入しているという結果が判明した(True Data調べ)。この調査報告に対し、大正製薬は「日本初の内臓脂肪減少薬への期待と本気で生活習慣を変えようと思って購入されている方が多いと推察しております」とコメントした。

またアライ専用LINEアプリ「STEP UP DIARY」の記録データによると、1日3回、用法通りに服用した人は全体の74.7%にのぼる。発売前に行われた臨床試験では2カ月後に腹囲減少マイナス3%以上を達成した人は58.5%だったが、発売後にLINEアプリで腹囲を記録している人も、ほぼこれと同様の効果が出ているという。

自分はアライを購入できるの?

発売前から世間の注目を集めたアライ。発売1カ月前の3月には大正製薬のコールセンターへ2,653件の問い合わせがあったそう。発売直後の4月には1,658件、発売1カ月後の5月には937件と徐々に件数は減ってはきているものの、それでもひとつの薬に対する問い合わせ数としてはかなり多いのでは。問い合わせ内容の多くは「自分は購入できるのか?」という購入条件の確認、そして「医療用医薬品やOTC医薬品(薬局やドラッグストアで購入できる市販薬)を服用しているがアライを服用してもよいか?」という薬の飲み合わせの2点が非常に多く、それに対応すべく大正製薬ではブランドサイトにFAQという形で新しいコンテンツを拡充中とのこと。

こうしてあらためて発売後のアライを取り巻く環境を見てみると、肥満に悩む人にとっては夢のような新薬が登場したという事実が大きく感じられる。しかし残念なことに、一方ではSNSで話題になっている“油漏れ”、つまり肛門から意図せずに油が流れ出る事象など、ネガティブな話題が世間でひとり歩きしているのもまた事実。だが実際にはコールセンターへの問い合わせ内容に油漏れなどの特有の事象に対するものは少なく、たまたま運悪く漏れてしまった人がそれをSNSに書き込み、いつの間にか拡散されて「アライ=油漏れ」というイメージが広がった可能性も否めない。もちろん、まったく油漏れしないとは言い切れないが、服用していない部外者がそれを面白おかしく拡散するのはいかがなものか。とくにアライは健康に密接に関係する薬なので、SNSで取り上げる際には世間に対する影響をよく考えてから投稿してもらいたいものだ。