<コラム>「ほぼ全世代新聞」を読んで

もうひと月前の話ではあるが、山陰中央新報社が5月20日の朝刊に掲載した「ほぼ全世代新聞」を読んだ。これは8面にわたる別刷り広告企画で、第69回全日本広告連盟山陰大会記念として新聞の新しい可能性に挑戦すべく、7つの世代の多様なリアルをピックアップしたものだ。

その内容は、山陰に暮らす0歳児から70歳まで各世代の7人のリアルな声を、それぞれ1ページで伝えるというもの。もちろん0歳児はまだしゃべれないから、赤ちゃんに絵を選んでもらう実験を東京大学赤ちゃん研究室監修のもとで行い、なぜその絵を選んだのかを考察する形をとるなど工夫された紙面作りがなされていた。

そのほかにも3児の子育てに奮闘する34歳女性が生み出した簡単レシピと、そこに行き着くまでに悟った育児への向き合い方、70代の恋愛シチュエーションを描いた漫画など、様々な見せ方が織り交ぜられていたが、その中で私の目が止まったのが「41歳/女性/猟師見習い」のページだった。

パッと見、振り袖を着た女性が林の中で銃を抱える絵面は何かの冗談かのようだが、下部に綴られたメッセージの内容は至極真っ当なもの。40歳を目前に始めたハンターという仕事を通して得られた自分の成長や価値観の変化などが書かれ、他人事ながら「あぁ、よかったねぇ」と思った。だが、彼女のメッセージの中で私が一番気になったのは、その後に書かれた「40歳は2回目のハタチ。」という一文だ。

ひょっとしたら、40歳を出身地で祝う「2回目の成人式」というイベントは今や全国的にも当たり前のことになっているかもしれないが、私の地元・別府ではすでに10数年前から行われていた。東京で雑誌の編集を生業とする私は残念ながら参加できなかったが、後々同級生からその時の写真などが送られ、その顔ぶれに懐かしさを感じたものだ。あれから早12年。8年後には3回目の成人式(還暦というべきか)を迎える。こんな感じで、記事を読んで自分の人生を振り返った人は私だけではあるまい。「ほぼ全世代新聞」、その狙いは見事に成功したようだ。

「ほぼ全世代新聞」特設サイト(6月30日まで開設)
sanin-chuo.co.jp/page/zenkoren/