温泉だけじゃない! 伝統の郷土料理を現代へアップデートする「おんせん県おおいた」の“味力”とは

「日本一のおんせん県」として名高い大分県が、温泉と並ぶもう一つの魅力「味力(みりょく)」を全国に発信するべく、2025年11月12日、東京・有楽町の公式アンテナショップ「坐来大分(ざらいおおいた)」にて「日本一のおんせん県おおいた 味力も満載 おおいた自慢の郷土料理 試食会」を開催した。

イベントでは、大分県広報広聴課による県の魅力を伝えるプレゼンテーションが行われた後、県内で古くから親しまれてきた郷土料理を現代風にアレンジした特別なメニューが集まったメディア関係者に振る舞われた。

大分の魅力は「温泉だけじゃない」

イベント冒頭の大分県 広報広聴課 課長の田吹美紀さんの挨拶に続くプレゼンテーションでは、主事の髙木美叶さんが登壇。「温泉だけじゃない」をキーワードに、県の多彩な魅力を紹介した。

大分県 広報広聴課 課長の田吹美紀さん

大分県 広報広聴課 主事の髙木美叶さん

大分県は源泉数・湧出量ともに日本一を誇る「おんせん県」であり、県内18市町村のうち16市町村で温泉が楽しめる。しかし、魅力はそれだけにとどまらない。旅行情報誌『じゃらん』の調査では「魅力的な宿泊施設があった」「ご当地ならではの体験・アクティビティが楽しめた」部門で全国2位にランクインするなど、観光地としての総合的な実力も高く評価されている。

髙木主事は、大分の魅力を「温泉」「自然・景観」「文化」「食」の4つの柱で解説。日本最古の天然地獄といわれる「血の池地獄」や世界屈指の炭酸泉「長湯温泉」といった温泉遺産に加え、ラムサール条約登録湿地「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」などの雄大な自然、八幡総本宮「宇佐神宮」や国の重要無形文化財「小鹿田焼(おんたやき)」といった歴史文化が今も息づいていることをアピールした。

県民のソウルフードから100年フードまで

プレゼンテーションの後半では「食」の魅力に焦点が当てられた。からあげやとり天といった県民のソウルフードから、新鮮な海の幸である「かぼすぶり」や「関あじ・関さば」、さらには文化庁が認定する「100年フード」に選ばれた「佐伯ごまだし」「頭(あたま)料理」「黄飯(おうはん)」「戸次(へつぎ)のほうちょう」など、多様で奥深い食文化が紹介され、大分が持つ「味力」のポテンシャルの高さが示された。

伝統の味を、坐来大分の櫻井料理長が現代風にアレンジ

プレゼンテーションの後、参加者にはお待ちかねの郷土料理4品が提供された。今回のメニューは、坐来大分の櫻井政義料理長が、この日のために厳選した伝統的な郷土料理を現代風にアレンジした特別なものだ。

坐来大分料理長 櫻井政義さん

櫻井料理長は「食に載せて大分の魅力を発信することが使命。大分にはまだまだ知られていない食材が豊富にある。本日はそちらを色々ご用意させていただいた」と語り、大分の県産品をふんだんに使いながら、伝統に新たな息吹を吹き込んだ料理への自信をのぞかせた。

提供された4品の郷土料理


臼杵(うすき)きらすまめし
江戸時代、臼杵藩の質素倹約の精神から生まれた料理。おから(きらず)を刺身の粗(あら)にまぶす(まめす)ことで量を増やしたのが始まりだ。今回はかぼすブリの酢締めをおからならぬ豆腐の搾りかすで和え、仕上げに味一ねぎの根から作った香り高い葱油(そうゆ)をあしらうなど、食材を余すことなく使う「もったいない精神」を現代の美食へと昇華させた一品。


戸次(へつぎ)ほうちょう(鮑腸)
戦国大名・大友宗麟が好んだとされる麺料理で、アワビの腸に似ていることからその名がついた。櫻井料理長は、大分に根付く小麦文化を背景に、この郷土料理をパスタで表現。蒸し鮑のスパゲットーニに、宗麟が愛した鮑の肝ソースを合わせ、伝統と革新が融合した一皿に仕上げた。


四種の郷土寿司
地域ごとに特色ある寿司文化を持つ大分ならではの一皿。地場野菜を使った「日田 ひたん寿司 高菜巻き」、頭巾(ときん)を模した「津江 とっきん寿司」、酢飯の代わりに蕎麦を使った「蕎麦寿司」、木型で押し固める「中津 物相(もっそう)寿司」の4種が一堂に会した。特に蕎麦寿司は、豊後高田市産の白ねぎと相性の良い合鴨を組み合わせるなど、県産品の魅力を最大限に引き出すアレンジが光る。


由布(ゆふ)やせうま
平安時代から伝わる、小麦粉を薄くのばしてきな粉と砂糖をまぶした素朴なおやつ。今回は、生地に白玉粉を加えてより柔らかくもちもちとした食感に。さらに大分県産の旬の果物(イチジク、ピオーネ)とバニラアイスを添え、懐かしい味わいを洗練されたアラモード風のデザートとして提供された。

今回の試食会は、「おんせん県」という強力なブランドイメージの裏側にある、豊かで奥深い大分の「味力」を改めて認識させる機会となった。伝統的な郷土料理に込められた先人の知恵や物語を尊重しつつ、現代の感性で新たな魅力を引き出す。その巧みなアレンジからは、大分県の食文化が持つ柔軟性と未来への可能性が感じられた。次に大分を訪れる際は、温泉で体を癒すだけでなく、その土地ならではの「味力」を探す食の旅を楽しんでみてはいかがだろうか。