現代美術家・舘鼻則孝が手がける現代アートの展覧会「江戸東京リシンク展」が初のリアル展示を開催中
©︎Edo Tokyo Kirari Project, Photo by GION
江戸東京の伝統に根差した技術や産品などを新しい視点から磨き上げ、世界へと発信していく「江戸東京きらりプロジェクト」が、今年は初のリアル展示を敢行。東京都の伝統産業事業者を現代美術家・舘鼻則孝氏とのコラボレーターとして迎え、舘鼻氏の「日本文化の過去を見直し現代に表現する」という創出プロセスである「Rethink(リシンク)」を起点として、歴史ある伝統産業の価値や魅力を新たなかたちで提案する。会場となるのは、東京ドームのすぐ近くに位置し、文化財指定から今月ちょうど100年を迎えた特別史跡・特別名勝 小石川後楽園。この歴史ある場所で、革新的アートと伝統産業の融合を目撃できるのはわずか5日間。このチャンスをお見逃しなく。
現代美術家 舘鼻則孝氏からのメッセージ
江戸東京きらりプロジェクトのコンセプトである“Old meets New”。東京には、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和の時代にまで続く、数多くの「老舗」が存在しています。そして、そこにはさまざまな技、文化、伝統が息づいている。そうした東京の魅力を国内外に伝えたいという思いからスタートしたのが本プロジェクトになります。今回、その活動の一環として開催される「江戸東京リシンク展」に、私は、作家としてだけでなく、展覧会ディレクターとしても参画しています。私はこれまで“Rethink”という言葉を冠した展覧会をいくつか開催してきましたが、本プロジェクトのコンセプトである“Old meets New”と“Rethink”という概念は多くの共通点を有していると考えています。“Rethink”が意味するところを簡略化して言うなら、途切れることなく続く日本の伝統、あるいは文化を、現代においてそのまま再現するのではなく、現代的な意味を加えて表現するということです。そのため、私の作品はすべて、日本のこれまでの歴史、文化があってこそ、成立しているとも言えます。その点において、“Old meets New”と“Rethink”は同義であり、だからこそ、これまで数多くの伝統工芸、伝統芸能とコラボレーションする形で、過去と現在をつなぐ活動をしてきたのです。時代は変わっても変わるべきでないもの、時代が変わるからこそ変わるべきものを見極め、伝統を次の100年に残していくために、今、私たちが何をなすべきか。伝統をどう現代的な意味づけをして打ち出していくか。今回の展覧会は、東京の魅力を伝える場であるとともに、私たち自身がリシンクするための機会でもあるのです。
展示作品
江戸木版画 高橋工房とのコラボ作品は、《Duality Painting Series》と呼ばれる、左右から見ることで異なった2種類の図案が鑑賞できる舘鼻氏の絵画を木版画で表現したもの。4枚の版木の両面に彫られた図案を版数以上に多くの色で摺り重ねることで、鮮やかな色彩や深みのある色味が出来上がるという。
左側から見た時と右側から見た時では異なった絵が現れる。
建物内では、伝統産業事業者が保有する貴重な歴史的資料や実際に使用されている工具なども展示されている。写真は江戸組子 建松が組子細工で使用する工具。
園内の得仁堂(とくじんどう)に飾られているのは、雷鳴を神仏の来臨に擬えて雷神の持つ雷鼓を表した、和太鼓 宮本卯之助商店とのコラボ作品。
八卦堂跡に飾られているのは、舘鼻氏が描く雷雲のモチーフが繊細な切子文様として意匠化された江戸切子 華硝とのコラボ作品。
東門近くの富士見堂に飾られた、新江戸染 丸久商店とのコラボ作品。1970年代に丸久商店が発表した図案に、舘鼻氏が雷雲のモチーフを描き足すことで完成した。
組子細工による伝統的な幾何学文様と舘鼻氏がアクリル絵の具で描いた雷雲のモチーフがレイヤーとなって表現された、江戸組子 建松とのコラボ作品は西行堂跡に展示。
舘鼻氏の代表作ともいえるヒールレスシューズは唐門に展示。東京くみひも 龍工房とコラボした本作は、新たに考案された表と裏で色が異なる組み方で組まれた正絹製の「角紐」を採用。着物の羽裏から着想を得た角紐は、一見モノトーンに見える作品に差し色として豊かな表情を与えている。
ヒールレスシューズと舘鼻氏。
今回の会場となった「特別史跡・特別名勝 小石川後楽園」は、関ケ原の合戦から29年後の寛永6(1629)年、水戸藩の祖である徳川頼房が増築を開始し、頼房の三男で「水戸黄門」として知られる二代藩主の光圀が修治し完成させた江戸時代初期の庭園。都立文化財9庭園のひとつであり、昭和27(1952)年に文化財保護法により、特別史跡・特別名勝に指定されている。
〜江戸東京きらりプロジェクト×現代アート〜「江戸東京リシンク展」 開催概要 |
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開催期間/2023年3月11日(土)〜15日(水)9:00〜17:00 ※最終入園 16:30 会場/特別史跡・特別名勝 小石川後楽園 主催/東京都・江戸東京きらりプロジェクト 参加事業者/江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、和太鼓 宮本卯之助商店、東京くみひも 龍工房、江戸組子 建松、新江戸染 丸久商店 edotokyokirari.jp/news/life/edotokyorethink2023/ |
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