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ニコンメガネ レンズメーカー直営店で作る“見え心地”のよい眼鏡
第四回「これまでにないクリアな視界で紅葉の撮影と画像レタッチ」

(写真上)Macでの細かい作業の時に大活躍する中近眼鏡。今やこれなしでは仕事にならない。

第三回「出来上がった眼鏡で見え心地をチェック」はこちら

世界が大きく変わった今年も、残すところひと月半。これまで開きたくても開けなかった反動からか、今週末から始まる連休に向けて、いたるところで小規模ながらも様々なイベントが準備されている。火曜日のこの日は、昼すぎからフィンランド大使館で連休の土日に開催される「Happy Day in Finland」というイベントのメディア発表会があり(発表会リポートはこちら)、現地の人とリモートで話したり、フィンランド産ビールを飲んだりといった時間を過ごした。で、その帰り道。フィンランド大使館から一番近い広尾駅に向かう途中、赤や黄色に色づいた木々が視界に入り、吸い込まれるようにそこへ足を踏み入れた。

フィンランド大使館の正門前。この時間は、まだ日差しが強かったのか、トランジションズ・レンズの色は濃くなっていた。

その場所は「有栖川宮記念公園」。かつての有栖川宮御用地に造られ、現在は港区が管理している、およそ6万7000㎡の広さを誇る公営の風致公園だ。風致公園とは自然の風景などの趣きが味わえる都市公園のことで、この有栖川宮記念公園は児童福祉に深い関心を寄せられていた高松宮殿下が故有栖川宮威仁親王の20年の命日にあたる1934年(昭和9年)にこの地を東京市に賜与され、記念公園として一般開放されたのが始まりだという。正面入口から入ってすぐの場所には日本庭園の象徴である池があり、大小ふたつの滝や小川など、とても都心とは思えない自然風景が目を愉しませてくれる。

日本庭園の象徴である池と、赤や黄色に染まった木々。広尾駅から歩いて5分くらいの場所にあるとは思えないほど自然豊かな場所だ。

あとから調べて初めて知ったのだが、ここ有栖川宮記念公園は都内屈指の超穴場紅葉スポットなのだそうだ。この辺りには仕事で来ることも多く、以前から大好きな公園だったのだが、秋に来たのはなぜか初めて。そのため、この紅葉の見事さを知らなかったのが悔やまれる。とりあえず、ポケットからiPhoneを出して紅葉を写真に残そうとした時、ふと気がついた。そう、取材で大使館に行った帰りだから、肩からぶら下げたトートバッグの中にミラーレス一眼が入っているのだ。どうせ写真を撮るなら、これで撮影しようと思い立ち、バッグからカメラを取り出した。

公園のシンボル「有栖川宮熾仁親王騎馬像」と紅葉。あくまでも個人的な見解だが、軍人や文人の像とは違う雅やかさが感じられる。

晴れている日中に撮影する時、「よい撮影日和ですね」と声をかけられることがよくあるが、我々編集者にとって快晴は大敵。というのも、あまり日差しが強いと被写体が白く飛んでしまい、後から画像補正しようにも白飛びした部分には何もデータがないのでいじりようがないのだ。若い頃、すでに鬼籍に入られた写真家の松村秀雄さんにお世話になったのだが、この松村さんの異名が「ピーカンの松村」。王貞治の756号ホームランやピンクレディーのスタ誕グランプリのショットを撮影した巨匠なのだが、とにかく晴れ男。撮影に入ろうとすると必ずといっていいほど晴れるのだ。しかもカンカン照りで。白壁の蔵の撮影時には、雲で太陽が隠れるまで「松村さんの雲待ちで〜す」と二時間以上待ったことを思い出す。とにかく、屋外で何かしらの被写体をきれいに撮影したいなら、日が弱まる夕方近くがオススメだ。

バッグからカメラを取り出した時間帯は、ちょうど日が弱まったタイミング。紫外線も強くない。なぜそれがわかるのかというと、大使館を出た時は濃い色に変わっていた眼鏡のレンズが、今は透明だから。トランジションズ・レンズは、明るさではなく紫外線の量で色が変化するのだ。紫外線量が少なければ、日差しも強くないということ。撮影するなら今がグッドタイミングだ。

まだ日は落ちていないが、レンズは透明なので紫外線量は少なめなのがわかる。ちなみに背後から来た紫外線はメガネレンズの裏面で反射して目に届いてしまう。レンズが紫外線を吸収してカットしても背後から来る紫外線には無防備だったのが従来のレンズ。今回このレンズにはシーコートネクストというコーティングが施されている。このコーティングは上写真の矢印のような、背後からの紫外線の跳ね返りを抑えるので、360°すべての方向から来る紫外線に対して対策が打たれている。

ニコンメガネで新しく眼鏡を作ってから、安心して撮影に挑むことができるようになった。というのも、それまではファインダーを覗いてもよく見えないし、カメラのディスプレイで画像確認しようにもまったく見えなくなっていたから。しかし、新しい眼鏡にしてからは被写体も見えるし、画像確認もその場でできるというシームレスな流れになり、ストレスがなくなったのだ。最初のヒアリングで「とにかく撮影の時にちゃんと見える眼鏡がほしい」と伝えたのだが、佐藤店長はその希望を見事に叶えてくれた。

今回撮影した写真の色調補正画面。Photoshopで写真を明るくする際は「明るさ」をいじってはいけない。必ず背景レイヤーを複製してスクリーンモードで明るくしよう。こうすれば、ディテールを壊さずに明るくできる。

撮影後はMacでの色調補正。私の場合、まずはカメラからJPEGとRAWデータをMacに移し、それぞれをフォルダ別に分けるところからスタートする。続く流れは以下の通り。

・JPEGの写真を見て、使いたい構図のファイルをある程度絞り込む。
・絞り込んだJPEGと同じファイル名のRAWデータをAdobe Lightroomで現像する。
・LightroomからPhotoshopに書き出し、明るさや色調を補正する。

この作業では、遠近から中近に眼鏡をチェンジ(一番上のキーボードの上に置かれた眼鏡)。理由はもちろん、遠近よりも手元がさらに見やすいから。これまでは画面がぼやけてよく見えなかったため、色調補正は勘で行っていたこともあったのだが、今は違う。葉っぱの一枚一枚まで見えるようになり、効果の具合が見えないからと使っていなかったPhotoshopの裏技なども久々に使ってみた。下の左側の写真はまったく加工していない素のJPEG。対する右側はRAWを元に色調補正を施して書き出したJPEG。このように、暗めの写真の奥にはデータが隠れているので、「暗い写真だから」と捨てないで色調補正に挑戦してほしい。それと、今やデジカメのカードも大容量時代。どうせ撮るならJPEG+RAWで撮ろう。写真が増えてドライブの容量が圧迫されてきたら、クラウドにアップすればOK。Amazonプライム会員ならRAWデータも含めた写真データが、無圧縮で無制限にアップできるからオススメだ。

この連載も、今回が最終回。連載開始後から、記事を読んだ同年代の人たちに「本当に見えるようになるの?」といった声をかけられることが本当に多かった。中でも強烈な印象を残したのが、私と同い年の某企業の社長さん。「眼鏡を掛け替えるのは面倒くさい。でも遠くが見えないことより、手元が見えないことのほうがストレスだから、運転時は眼鏡をかけない」と言っていた。いや、それ危ないから。標識、見えないでしょ。で、その社長さんには、こう言いました。

「見えないことがストレスで、それが原因で人生を棒に振るようなことになるなら、ストレスにならない眼鏡を作ればいいじゃん。俺は作ったよ」

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