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町工場の資材置き場にあるスペシャルティコーヒー専門店

多くの町工場がひしめく東京・大田区。そこに一風変わったコーヒー店を発見した。京急線雑色駅から歩いて10分ほどの場所にあるBUCKLE COFFEEは、シャッター工場の資材置き場に店舗を構えるスペシャルティコーヒー豆の専門店。道路沿いに立てられたノボリに気が付かなければ素通りしてしまいそうな店構えだが、正真正銘間違いなくコーヒー店だ。よくよく話を聞いてみると、なんでもこの工場は代表のお父さんが経営しているそうで、その一角を使ってお店を開いたのだとか。そのBUCKLE COFFEE代表・石山さんが、ここに店をオープンするまでの経歴が面白い。コーヒーに魅せられた4年前、生産地・東ティモールへの渡航を思い立ち、3カ月でインドネシア語をマスター。半年後の2014年10月には現地のNGOに入って2年間、東ティモール全土の農村を回りながら、コーヒーたココナッツなどの農作物を作る活動をしたそうだ。ちなみに東ティモールを選んだのは、コーヒー三大陸のひとつでありながら、アジアはほかのアフリカ、中南米のように市場が出来上がっていないということと、自分が生まれ育ったこのアジア圏のコーヒーに興味と可能性を感じたからだという。そして2年間でコーヒーの生産工程を身につけて帰国し、BUCKLE COFFEEを立ち上げたわけだ。

BUCKLE COFFEEでは、月替りでその時に旬のコーヒー豆を提供している。それも毎月わずか8種で、テイスティングのプロのためのコーヒーカッピングフォームや、味わいの表現をグラフにまとめたフレーバーホイールなどを駆使しつつ、いくつもの候補の中から自分たちが実際に飲んでみて納得したものしか販売しないという。そのため、お客さんが気に入った豆を翌月買いに行っても手に入らないことが多々あるそうだ。また焙煎にもこだわりが。どんなに煎ってもシティローストまでで、それ以上は煎らない。その理由はスペシャルティコーヒーはそれぞれの豆がもつフルーティーなテイストが命で、深煎りするとそれが味わえなくなるからだ。実際、ニカラグア・エンパシーというオススメの豆をアイスで飲ませてもらったが、超高額希少豆ゲイシャにも似たブドウのような甘いテイストが印象的だった。

コーヒーの概念を「とりあえず飲む」から「おいしく飲む」へと変えるのが目標と語る石山さん。現在の店舗は大田区の一軒だけで、遠方のお客さんにはネットで販売しているが、本当に家でおいしく飲めているのか心配だからと、なんとメールでの淹れ方サポートも行っているという。また淹れ方教室も開催しているので、自分でおいしいコーヒーが淹れられるようになりたい人は、公式HPから予約して参加してみてはいかが。


麻袋の中には買い付けたスペシャリティコーヒーの生豆がぎっしり。

焙煎機は富士珈機製を使用。焙煎後は念入りに豆をチェック。焙煎士の佐藤さん(写真下)は石山さんの中学の同級生。もともとブラックコーヒーは苦くて飲めなかったそうだが、石山さんに飲ませてもらって以来、スペシャルティコーヒーの虜になったという。ちなみに屋号のBUCKLE COFFEEはエプロンに描かれたロゴマークにあるようにベルトのバックルがコーヒー豆に似ていることと、コーヒーの生産地を地図上で描いた時のコーヒーベルトの結び目になるという目標から命名された。

店頭では、淹れたてのコーヒーも購入可能。ちゃんと焙煎されたスペシャリティコーヒーはエグみがなく、沸騰したお湯でも抽出できるからと、一般家庭と同じ水道水を沸騰させて使用。ホットコーヒーを口にする際、最適な温度は56〜60℃だというが、高温から冷めていく過程の味の変化が愉しめるのもスペシャルティコーヒーの醍醐味。BUCKLE COFFEEでは一杯ごとにそのコーヒー豆のプロフィールが書かれたカードももらえるので、読みながら飲むことでおいしさも倍増。

こちらはアイスコーヒー。ドリップしたり、写真のようにフレンチプレスだったりと、豆によって最適な方法で淹れられる。



BUCKLE COFFEE
東京都大田区東六郷2-4-14(焙煎所建て替えのため、現在焙煎所を一時移転して営業中:東京都大田区西六郷4-2-7 池原ビル1F)
03-3731-1515
開店時間/8:00〜17:00
定休日/水曜・木曜
www.bucklecoffee.com

(男の隠れ家ONLINE 2018年7月26日)