日本酒の香りがリラックス効果をもたらす
月桂冠総合研究所が世界で初めて確認
コロナ騒動で自宅に籠もらなければならない現在、これまでになく家飲みをする機会が増えたという人も多いだろう。それがひとり飲みでも家族飲みでも、はたまたオンライン飲みでもなんでもいいが、どうせ飲むなら、いやこんな時だからこそ飲んでほしい酒がある。「日本酒」だ。
日本酒というと「悪酔い」とか「二日酔い」といった残念なイメージをもつ人が多いようだが、それはお酒の飲み方を知らない人が勝手にもっている日本酒のイメージ。旨い肴をアテにスマートに飲む日本酒は、仲間たちとバカ騒ぎしながらストレス発散とばかりに浴びるように飲むのとは違った愉しみを我々に教えてくれる。そして、精神的にも肉体的にもストレスMAXなこのタイミングで日本酒を勧める理由。それは日本酒の「香り」にある。
日本酒の香りが人体に与える影響
ところで、その日本酒の香りだが、あなたはすぐにそれがイメージできるだろうか。普段ほとんど日本酒を口にする機会がなければわからないかもしれないが、コメが主原料で果物は一切使用していないはずの日本酒からは、なぜかフルーティーな香りが漂っている。これは酵母によって作られる「吟醸香(ぎんじょうか)」と呼ばれるもの。その主要な成分は、リンゴのような華やかな香りの「カプロン酸エチル」や、バナナのような芳醇な香りの「酢酸イソアミル」などがあるが、なんとこれら吟醸香の成分を嗅ぐことでリラックス効果が得られるというのだ。
今年3月5日、日本農芸化学会2020年度大会にて月桂冠総合研究所が発表した「日本酒の香りは生理的・心理的リラックス効果をもたらす」によると、日本酒の吟醸香を嗅ぐことでヒトに次のような影響を及ぼすことが確認されたという。
吟醸香を嗅ぐことで、心の平穏をもたらす
香りを嗅ぐ前と後での感情の変化と、気分の変化を調査したところ、抑うつ・不安、敵意、感情の高ぶり、緊張感およびストレス、欲求といった感情や心理状態がカプロン酸エチルまたは、酢酸イソアミルを嗅ぐことで有意に低下することが認められた。
月桂冠「日本酒の香りで癒しのひとときを」
gekkeikan.co.jp/RD/keyword/ginjoka/
「カプロン酸エチルまたは酢酸イソアミルを嗅いだ後気分は安らぐ」より
吟醸香を嗅ぐことで、鎮静効果をもたらす
自律神経活動により支配される眼球の筋肉によって起こる瞳孔対光反応の縮瞳率が、カプロン酸エチルまたは酢酸イソアミルを嗅ぐと、空気やエタノールだけを嗅いだときよりも有意に大きくなり、副交感神経活動が優位となっていることがわかり、2つの香気成分に鎮静効果が認められた。
さらに、この2つの香りのそれぞれ鎮静効果のメカニズムなどについての研究成果なども発表されたが、学術的な内容は下記URLを参照してほしい。
gekkeikan.co.jp/RD/sake/sake17/
さて、その吟醸香は主に吟醸酒タイプの日本酒に含まれる。フルーティーな吟醸香をより醸し出すには、特別な方法があるという。それは、原料となるコメをよく磨き、低温で長時間じっくりと発酵させる「吟醸造り」という製法。この製法を用いることによって、フルーツや花のような華やかな香りを酵母が醸し出すのだ。これら日本酒製造の技術的なことに興味があれば、1980年代後半にカプロン酸エチルや酢酸イソアミルなどの生成機構の解明に成功した月桂冠のサイトがオススメ。商品解説はもちろん、技術的・学術的な記事やレポート、果ては「酔いつぶれた人の介助方法」まで掲載されていて面白い。
月桂冠HP
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