メタボ由来脂肪肝における新リスク病型を同定

代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)において、血清IgA高値を特徴とする新たな高リスク病型が、信州大学医学部を中心とする共同研究グループにより同定されました。
MASLDにおけるIgA高値と肝関連イベントの関連
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)は、肥満や糖尿病などの代謝異常を背景とする脂肪肝であり、進行すると肝がんや肝硬変合併症などの「肝関連イベント」を引き起こす可能性があります。これまで肝線維化の重症度が重要な予後予測因子とされてきましたが、本研究では、血清IgA高値を伴う患者群において、線維化の程度とは独立して将来的な肝関連イベントのリスクが高いことが明らかになりました。研究概要:
対象:肝生検で診断されたMASLD患者349例
解析手法:51項目の臨床・血液検査データを用いた機械学習による患者分類
主要な知見:血清IgA 318mg/dL以上は、進行肝線維化とは独立して肝関連イベントを予測する因子(ハザード比3.17)
論文公開日:2026年7月15日
掲載誌:Journal of Hepatology
DOI:10.1016/j.jhep.2026.06.044
腸-肝免疫連関と病態進行の解明
研究グループは、組織解析を通じてIgAを介した腸-肝免疫連関が病態進行に関与する可能性を提示しました。空間トランスクリプトミクスや単一細胞RNA解析の結果、肝臓の門脈域にIgA産生B細胞系細胞が集積し、免疫活性化や血管リモデリングに関与していることが示唆されました。また、腸管粘膜のIgA陽性細胞増加や腸管透過性指標の解析から、腸管バリア機能の変化を起点とする免疫活性化がMASLD進展の背景にあると考えられます。なお、本研究結果は、進行肝線維化とIgA高値を併せ持つ患者において、肝関連イベントの発症リスクが極めて高いことを示しており、より慎重な経過観察の必要性を示唆しています。ただし、本研究で同定された病型やリスク評価の臨床応用については、今後の国内外の前向きコホートにおける再検証や、IgA高値をもたらす背景因子の解明が必要です。

